今回の記事は、離婚のときの不動産の取り扱いについて解説します。
これからご夫婦で家を購入しようというときに、万が一の離婚を考えて予防線を張る人は稀でしょう。事前に、業者から詳しくアドバスを受けることもほとんどないと思います。
昨今では、「3組に1組は離婚する」などと言われていますが、われわれ不動産業者としても、お客様と面と向かってアドバイスしづらい内容です。参考程度でも結構ですので、この記事を一読いただければと思います。
【Q1】増加する夫婦共有名義。その利点と問題点
1999年以降、日本の共働き世帯は専業主婦世帯を上回り、2015年には全体の約6割を占めるようになりました。このようなご時世だからだと思いますが、夫婦共有名義で不動産を購入して、住宅ローンも2人で返済するご夫婦が増えています。
共働きのご夫婦が「ペアローン」や「連帯債務型」の住宅ローンを選択する理由のひとつは、単独名義のローンよりも、多くのお金を借りられるからでしょう。2人分の収入で借入額が計算されるので、単独では手の届かなかった物件を購入しやすくなります。メリットはその他にもあります。例えば・・・
- 住宅ローンの借入額を増やせるため、物件の選択肢が増える
- 各共有者が住宅ローンの団体信用生命保険に加入できる
- 各共有者が住宅ローン控除の対象となる
- 売却時の3,000万円特別控除を夫婦それぞれ適用可能
- 相続税の節税対策になる
一方、共有名義のデメリットもあります。例えば、以下のとおりです。
- 離婚時に揉める原因になる
- 不動産の扱いを巡って共有者間でトラブルになる可能性がある
- 住宅ローンでかかる諸費用が夫婦それぞれにかかる
- 共有者全員の同意がなければ不動産を売却できない
- 共有者が他界すると相続の対象になる
特に「離婚」が、一番のデメリットを生じさせます。財産分与のときに、物理的に分けることができない不動産は、離婚時にトラブルになりやすい財産です。
「自宅の名義をどうする」「住宅ローンの返済は誰がする」「住み続けるのか・売却するのか」など、夫婦間で決めなければならないさまざまな問題が発生します。2人の意見がまとまれば良いのですが、離婚時は意見がまとまらずトラブルになるケースも少なくありません。
【Q2】離婚原因と離婚夫婦の特徴
不動産のことから話が離れますが、日本の離婚事情について少しだけ書かせてください。
昔の日本は離婚大国だった
明治以前、じつは日本が離婚大国だったことをご存じでしょうか。離婚を7回以上することを禁止する法律が、かつて存在していた程で、その当時の離婚率は今以上でした。古風=辛抱強くて離婚しないというイメージは、われわれの勝手な思い込みのようです。
あと、「子は鎹(かすがい)」という言葉がありますが、内閣府の調べでは、子どものいる家庭の方が離婚率が高いという結果が出ています。われわれの離婚に対するイメージが、いかにいい加減であるかがうかがい知れます。
【 参考:結婚と家族をめぐる基礎データ(内閣府男女共同参画局作成) 】
現代の離婚事情
ここ数年、離婚件数はゆるやかに減少しています。ただし、婚姻数も減っているので、婚姻数に対する離婚数(特殊離婚率)は、大体35%付近でここ20年近く変わっていません。よく耳にする「3組に1組は離婚する」というのはこの特殊離婚率によります。
あくまでも計算上の話です。その年の婚姻件数と離婚件数を単純に比較すると(離婚届÷婚姻届の計算をすると)3分の1程度になるということなので、結婚すると3分の1の確率で離婚するということではありません。念のため誤解のないよう付け加えておきます。
【 参考:令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省のホームページ) 】
離婚の理由
司法統計の「離婚申し立ての理由」について、主なものを以下にあげてみました。
- 性格の不一致
- 金銭的問題 (生活費を渡さない、浪費等)
- 虐待・暴力(精神的、身体的)
- 不貞行為(不倫・浮気)
- 親族との人間関係
- その他(酒、性的不満、病気等)
この中でも夫婦両方ともに一番多かった理由が「性格の不一致」です。何とも、当たり障りのないというか、つかみどころのない理由が1位なのでモヤモヤしますが、以前に弁護士から「離婚する夫婦の特徴」を教えてもらったときに、何となくその実態をうかがい知れたような気がしたので、そちらについても以下にご紹介します。
- 口を開けば文句や喧嘩ばかり
- すぐ衝突するので互いを避ける
- 相手に対して無関心になった
- 孤立、継続的な我慢を感じる
- その他(趣味趣向が合わない、性の不一致)
これらの特徴を客観的に見ていると、離婚の根本的な原因は、「正常なコミュニケーションの喪失」の一言につきるように思えてきます。(趣味趣向が合わないとか、性の不一致については、ちゃんとしたコミュニケーションが結婚前から取られていなかったということなのでしょうか・・・)
離婚のときは財産分与の割合を決める必要がありますが、正常なコミュニケーションが取れていないと、財産分与で揉める可能性も高くなります。特に、共有名義の不動産を売却する時は、共有者で同意をとっておかなければならないことがあるので、二人の綿密な話し合いが必要になります。この話し合いが出来ないために、なかなか家が売れないというケースがよくあります。
財産分与の詳細については次章で解説します
【Q3】不動産の財産分与とは?
夫婦の婚姻関係を解消する際に、財産分与で揉めることがあります。財産分与とは、離婚時に婚姻生活のなかで築き上げた預貯金や自宅、自動車、株式などの共有の財産を夫婦で分けることです。ちなみに、婚姻前の預貯金や不動産などの財産は、離婚時の財産分与の対象にはなりません。
原則は半分
夫婦の財産分与の権利は、原則1/2ずつとなります。婚姻期間中、夫婦2人の協力によって財産を築き、どちらも同じだけ貢献していると考えられています。そのため、マンションや一戸建て、土地などの不動産を所有している場合も、単独名義・共有名義にかかわらず、財産分与の割合は原則1/2ずつです。よくある勘違いで夫婦が離婚した場合、共有名義の不動産は「持分割合に応じて財産分与をおこなう」と思われがちですが、それは違います。持分割合は関係なく、夫婦で1/2ずつ分けることになります。
ただし、不動産は預貯金や株などとは異なり1/2に分割することは物理的に出来ませんので、下記の2つの方法がとられます。
①不動産の売却益を分割
不動産を財産分与する方法としておすすめなのが、不動産を売却して売却代金を2人で分ける方法です。この方法であれば、後々トラブルになるリスクを抑えられ、きれいさっぱりと財産を分け合うことができます。
②一方が住み続ける。(不動産価値の半分をもう一方へ支払う)
離婚したとしても「子どもが通っている学校を変えたくない」「住み慣れた生活環境を変えたくない」など、そのままどちらか一方が住み続けることも少なくありません。
この場合は、不動産鑑定士などの専門家に査定を依頼して、査定価値をもとに分割割合に応じた金額を家の所有権を手放した側に渡します。
住宅ローン残債というハードル
ただし、住宅ローン残債がある場合は、不動産の売却価格で残りのローンを完済できるかどうかを確認しなければなりません。
不動産の売却価格が住宅ローン残債を上回っているアンダーローンの場合は、売却代金で残ったローンを完済し、残額を二人で分け合えれば、大きな問題とはならないでしょう。
しかし、住宅ローン残債が自宅の売却価格よりも上回っているオーバーローンの状態では、そもそも財産分与の対象にはなりません。オーバーしている金額部分は預貯金などで支払ったうえで売却をし、売却代金を分け合うことになります。
預貯金で完済できない場合は、どちらか一方が住み続けて残った住宅ローンを返済し続ける方法がありますが、不動産価値からローンを除いた金額を、あらかじめ二人で分配する必要があります。
その他、任意売却という方法もありますが、ここでは言及しませんので、下リンクの関連記事にてご覧ください。
【 関連記事:コロナ禍の不動産トラブル事情(2) ─ 任意売却 】
本当に注意すべき「住宅ローン」の縛り
住宅ローン残債があるときの本当の注意点は「支払責任」です。離婚して、どちらか一方がもう一方へ所有権を譲渡したとしても、連帯債務・連帯保証の契約は継続します。つまり、家の所有権を引き取った側の人がローン返済を滞らせると、所有権を手放したもう一方の人にも支払責任が及びます。それだけ、住宅ローンの連帯契約は強力だということです。共有名義でローンを組むときに、ここまで考えられている人がどれだけいるでしょうか。
この強力な縛りを解く方法は以下の3つです。
①ローンの完済
理想はローンの完済です。
②代わりの人を立てる
二つ目は、代わりの連帯債務者または連帯保証人を立てることです。代わりの人を立てる場合は、現在のパートナーと同等の収入・信用がある人でなければ金融機関の承諾は難しいと思います。
③新たな住宅ローンの借り換え
三つ目は、新たな住宅ローンの借り換えです。ただし、借り換えには、夫もしくは妻の単独でローン審査を通さなければなりません。夫婦でようやく通ったローン審査の場合、単独で審査が通るのは非常に難しいと思います。ましてや、住宅ローンの名義変更は困難で、銀行から一括返済を要求されるなど、藪蛇になることさえあります。名義変更は、プロに相談することをお勧めします。
離婚で自宅を売却するときも、五條建設にご相談ください
離婚でご自宅を財産分与するとき、売却してその利益を分け合う方法が、比較的トラブルが少ないと思います。また、離婚後は新生活に向けてまとまった資金が必要になるので、売却代金が手元に入れば助かることでしょう。
売却をする際は、まずは自宅の不動産価値を知る必要があります。五條建設では不動産査定も承っておりますので、お気軽にご相談ください。