不動産関連のコラム

不動産と税金対策

「不動産」と「税金」は切り離せない関係にあります。「購入」「売却」「保有」「賃貸」など、不動産に関するあらゆるシーンでさまざまな税金が発生します。
今回は、住宅ローン・控除制度・不動産投資関連の節税について取り上げます。

【Q1】住宅ローンの繰り上げ返済はしない方がよい?

昨今の低金利のため、住宅ローンの繰り上げ返済にメリットを感じることが少なくなりました。


【 出典:民間金融機関の住宅ローン金利推移/住宅金融支援機構

上記表から、1990年代のバブル崩壊以降、金利が低水準を維持しているのがおわかりいただけると思います。上図は住宅ローンの「店頭金利(基準金利)」の推移です。実際に住宅ローンの借り入れの際は、各金融機関が独自に設定している優遇金利が差し引かれた「適用金利」が使われます。
例えば、3,000万円を35年、適用金利1%で借り、10年後に500万円繰り上げ返済した場合のシミュレーションを下表に示してみます。

シミュレーション結果

繰上返済しなかった場合繰上返済した場合
毎月返済額84,685円84,685円
ボーナス月返済額84,685円84,685円
年間返済額1,016,220円1,016,220円
(試算上の元金充当額:4,962,436円)
総返済額35,567,700円34,348,131円
返済方式元利均等返済元利均等返済
残存返済期間25年18年11カ月

【 出典:一部繰り上げ返済シミュレーション/三井住友銀行

上表の例では、500万円繰り上げ返済すると、返済元本の金利分「約120万円」を総返済額から減らせます。ただし、誰もが繰り上げ返済をした方が良いわけではありません。

  • 住宅ローン控除を受けている人
  • 家計に余裕がない人
  • 手元に現金を残しておきたい人

このような人にとって、繰り上げ返済するメリットは少ないでしょう。住宅ローンを借りている方はご家族が多いと思います。手元にまとまった現金があれば、住宅ローンよりも金利の高い「教育ローン」などを使用しなくて済むかもしれません。その他、自宅のリフォーム、車の買換えなどライフイベントごとの出費もあるでしょう。繰り上げ返済を検討する場合は、先を見越した判断をとるようにしましょう。

団体信用生命保険という特別な保険

住宅ローンには「団体信用生命保険(以下、団信)」という生命保険が付いています。団信についてご存じの方も多いと思いますが、住宅ローン利用者が返済期間中に死亡したり高度障害になると、その時点で住宅ローン残高に相当する保険金が下りて住宅ローン残高は0円になります。
住宅ローンの利息(金利)が、一般の生命保険料より安いなら、わざわざ他の生命保険に入るよりも、繰上返済をせずに住宅ローンを借り続けた方がお得です。この低金利が続く限り、「団信」を有効に活用しましょう。
団信は住宅ローンを借りた人しか利用できない特別な保険です。いまは慌てて繰り上げ返済する必要はないと思います。

【Q2】家を売る時の3,000万円特別控除とは?

マイホームを売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
特例を使うには適用要件があり、例えば、居住用財産に限られるため、別荘やセカンドハウスなどは対象になりません。適用要件の詳細は以下の通りです。

  1. 自分の住んでいる家屋やその家屋とともにその敷地や借地権などを売却したとき
  2. 以前に住んでいた家屋や敷地等で、住まなくなった日から3年が経過する年の12月31日までに売却すること
  3. 家屋を取り壊した日から1年以内に譲渡契約をし、住まなくなった家屋とその敷地を、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却したとき
  4. 家屋を取り壊した場合、譲渡契約をするまでは貸付やその他の業務に供していない土地等であること
  5. 前年または前々年にこの特例、または買い替えや交換の特例を受けていないこと
  6. 売却する相手が、配偶者・直系血族・生計を一にしている親族、内縁の者、自らが経営する会社などではないこと

適用要件の詳細は、国税庁のWEBサイト「マイホームを売ったときの特例」で確認できます。なお、3,000万円の特別控除を適用する場合の計算式は以下の通りです。

譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用) = 譲渡所得

(譲渡所得 - 控除額 3,000万円) × 税率 = 譲渡所得税

たとえば、譲渡価格5,000万円、取得費1,000万円、譲渡費用300万円、所有期間が5年超である場合

5,000万円 - (1,000万円 + 300万円) = 3,700万円

(3,700万円 - 3,000万円) × 20.315% = 1,422,050円

ちなみに、3,000万円特別控除を適用しない場合は、譲渡所得は3,700万円となり、譲渡所得税は 7,516,550円 です。特別控除を適用した場合との差が 6,094,500円 となりますので、3,000万円の特別控除の効果が大きいことがわかります。

【Q3】節税を目的とした不動産投資には注意が必要?

結論から先に言ってしまうと、不動産投資には節税効果があります。
例えば、会社勤めをしていて、個人でも不動産投資をしている人のケースで解説します。不動産投資が赤字の場合に限りますが、会社員の給与所得と「損益通算」することで、所得税や住民税の支払いを少なくすることが出来ます。

減価償却費を経費計上

物件を購入した初年度は、不動産取得税や登録免許税など、さまざまな経費がかかるので、赤字になりやすいです。不動産投資において、この「経費」が、節税のポイントになります。その中でも特に重要な経費項目が「減価償却費」です。減価償却とは、不動産などの固定資産を購入したときに、建物の構造によって定められた法定耐用年数に基づいて、価値が下がった分を毎年少しずつ分割し、経費として計上できる仕組みです。たとえば、分割して経費計上できる期間が20年の物件を1,000万円で購入した場合、毎年50万円(1,000万円÷20年)を減価償却費として計上できます。減価償却費は、実際にお金の支出がない帳簿上の費用です。

融資を受けられなくなるかも・・・

ただし、この節税方法は赤字前提の話です。家賃収入よりも経費が上回る状態が続けば不動産所得を赤字として計上できますが、節税目的での物件購入はおすすめしません。節税を目的として赤字計上していると、金融機関からは「経営がうまくいっていない」とみなされ、次の物件購入時の融資を受けられないおそれがあります。
不動産投資は「不動産賃貸業」という立派なビジネスです。節税ありきで投資をするのではなく、節税「も」できるからお得なケースもあるというくらいの感覚でいたほうが良いでしょう。「節税」の甘い言葉に踊らされずに、しっかりとビジネスとして捉えて黒字経営を目指しましょう。

【 参考:No.2250 損益通算/国税庁

【Q4】不動産に関わる節税は?

不動産に関わる節税の方法は、前述の「減価償却費を活用した損益通算」だけではありません。節税効果のあるその他の方法をご紹介します。

青色申告をする

保有している賃貸物件が事業的規模(青色申告)と認められれば65万円の控除、業務的規模(白色申告)であれば10万円の控除を受けられます。一般的にアパートやマンションを10室以上、もしくは貸家などを5棟ほど保有していれば事業的規模と認められます。
青色申告のメリットとして次に重要なのは、純損失の繰越ができる点です。ある年に赤字を出してしまった場合、その赤字を3年間繰り越せるので、翌年以降の黒字と相殺できます。補修工事などで赤字になった場合に繰り越せるため、非常に役立つ制度です。
また、事業的規模で且つ配偶者や親族に給与を支払うのであれば、青色事業専従者給与を支払うことができ、給与も経費として計上できます。

不動産投資に関わる経費を計上する

前文でも解説しましたが、不動産投資に関わる経費を計上することは節税につながります。「収入」から「経費」を差し引いた「所得」が課税対象となり、経費が多いほど課税対象となる所得が少なくなるからです。経費として認められる主な項目は以下の通りです。

  • 減価償却費
  • 保険料
  • 管理費
  • 修繕費
  • ローン金利
  • 税理士や司法書士への報酬
  • 雑費
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 固定資産税・都市計画税
  • 管理会社への委託料

上記の通り、不動産投資において経費にできる項目は多岐に渡ります。不動産投資事業に必要な費用や利益を上げるために必要な費用は、不動産投資に直結するものは経費として認められますが、プライベートの支出など事業と関係のない経費は当然認められません。何をどこまで経費に含めるか判断が難しい場合は、税理士や不動産会社などに相談してみると良いでしょう。

【Q5】法人名義で物件を購入

不動産を保有する規模が大きくなってくると、資産管理法人を活用したほうがメリットは大きいです。「税負担の軽減」のほかにも、「経費の範囲が広い」「相続税がない」「赤字の10年間繰り越しができる」など、さまざまなメリットがあります。法人化のデメリットも含めて、関連記事で詳しく書いているので、下記リンクから併せてご覧ください。

【 関連記事:法人名義不動産のメリット&デメリット

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