不動産関連のコラム

知らないと損する固定資産税① ─ 減税措置・滞納リスク

毎年4~5月頃になると不動産所有者へ固定資産税の通知が届きます。家計に結構な負担になる税金なので、ランニングコストとしてしっかり見込んでおく必要があります。今回の記事では、固定資産税の基礎知識から、知らないと損する減税制度、延滞したときのリスクについて解説します。

【01】固定資産税の基礎知識

固定資産税とは、固定資産(土地、家屋、償却資産など)に対して市区町村が課する税金です。課税対象者となるのは、1月1日時点でのその所有者です。年の途中で固定資産を手放したとしても、その年の固定資産税は基本的に負担しなければなりません。

固定資産税 = 課税標準額(固定資産税評価額) × 標準税率(1.4%)

さて、上の式は固定資産税の計算方法です。固定資産税評価額は、通常、課税標準額と同額ですが、特例や調整措置が適用されると下の計算式のように、課税標準額は固定資産税評価額よりも低くなります。

固定資産税 = 課税標準額(固定資産税評価額 - 特例) × 標準税率(1.4%)

固定資産税評価額は各自治体によって算出され、3年に1回見直されます。その計算方法は複雑なため、一般の人が正確に計算するのは困難ですが、大まかな目安として、「土地」は公示価格の70%程度、「建物」の場合は再建築価格の50~70%程度と考えられています。

また、WEBサイト「全国地価マップ(固定資産税路線価)」では、土地の固定資産税評価額を求めるための固定資産税路線価(実勢価格よりも低く設定された1㎡あたりの土地価格)を調べることができます。この土地価格に土地面積を乗ずることで、おおよその固定資産税評価額を計算できます。

【参照:全国地価マップ(一般財団法人資産評価システム研究センター)

全国の標準税率は「1.4%」で、横浜市も1.4%ですが、市区町村ごとに異なる税率を定めることができるため、今後は変わる可能性があります。現在でも、人口が少ない地域では税率が高く設定されています(1.5~1.7%)。

なお、不動産の固定資産税は「都市計画税」と一緒に納税するのが一般的です。下の式のとおり、令和5年度の横浜市の税率は「0.3%」です。

都市計画税 = 課税標準額 × 税率(0.3%)

【02】固定資産税の飴と鞭(飴編 ─ 減額措置)

固定資産税は前述した計算ですべてが決まるわけではなく、特例や減税制度が適用される場合があります。以下に固定資産税の「飴」の部分として、主な特例や減税制度を3つご紹介します。


❶小規模住宅用地の特例/一般住宅用地の特例

この2つの特例は、居住用の家屋が建っている土地に対して適用され、固定資産税と都市計画税の課税標準額が下表のように減額されます。「小規模住宅用地の特例」について言えば、固定資産税が評価額の6分の1になり、かなりの減税になります。

特例の名称対象の住宅用地固定資産税都市計画税
小規模住宅用地の特例200㎡以下の部分6分の13分の1
一般住宅用地の特例200㎡を超える部分3分の13分の2

「一般住宅用地の特例」は、200㎡を超える部分に適用されます。例えば、床面積が300㎡の住宅用地の場合、そのうちの200㎡の部分は「小規模住宅用地の特例」が適用されて、残り100㎡の部分が「一般住宅用地の特例」が適用されます。

更地の場合はこの軽減措置が適用されないので、建物を取り壊して更地にすると、土地の固定資産税額が最大6倍に増えます。


❷新築の減税特例

新築住宅の場合、床面積などが一定の条件を満たしていれば、税額が軽減されます。具体的には、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 新築住宅であること
  • 床面積の2分の1以上が住居用であること
  • 居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下であること

特例が適用できれば、1戸あたり床面積120㎡を限度に、築5年まで固定資産税が2分の1になります。
例えば、床面積が120㎡の住宅であれば固定資産税が2分の1になり、240㎡の場合は床面積の半分にかかる固定資産税が2分の1になります。
床面積すべてではなく、2分の1以上が住居用という条件があることから、賃貸併用住宅など一部を異なる用途で活用する場合でも適用できます。


❸長期優良住宅の減額措置

長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅のことです。耐震性や耐久性、省エネルギー性能、バリアフリーの性能などが一定の基準を満たす必要があります。特例措置を受けるための主な要件は2つです。

  • 床面積が50㎡以上280㎡以下であること
  • 認定長期優良住宅の認定通知書を取得していること

長期優良住宅の認定は、建築および維持保全の計画を作成し、所管行政庁に申請することで取得できます。長期優良住宅に認定されると、固定資産税額が2分の1に減額できる軽減措置の適応期間を「5年間」から「7年間」へ延ばせます。

【03】固定資産税の飴と鞭(鞭編 ─ 延滞金/差押え)

続いて固定資産税の「鞭」の部分の説明です。税金滞納のペナルティー、特例の解除、過料、そして強制撤去という厳しい措置について解説します。


納期限に遅れると延滞金がかかる

固定資産税の納期限に遅れると、延滞金が発生します。延滞金は延滞した日数が多ければ多いほど、支払う延滞税金の額も増加します。なお、延滞金の基準は市区町村によって異なり、年によっても変更されます。横浜市における直近5年間の延滞金は以下のように定められています。

【延滞金割合の推移】
期間納期限後1月以内納期限後1月超
平成27年1月1日から
平成28年12月31日まで
年2.8%年9.1%
平成29年1月1日から
平成29年12月31日まで
年2.7%年9.0%
平成30年1月1日から
令和2年12月31日まで
年2.6%年8.9%
令和3年1月1日から
令和3年12月31日まで
年2.5%年8.8%
令和4年1月1日から
令和5年12月31日まで
年2.4%年8.7%

【参照:延滞金について(横浜市のホームページ)

正確には、国内銀行の新規の短期貸出約定平均金利から、財務省が定めた利率をもとに計算しますが、複雑な内容になるため、本記事では割愛します。


滞納が続くと財産の差し押さえ

固定資産税を払わず滞納し続けると、各市区町村は滞納者に対して厳しい措置を講じます。例えば、横浜市の場合は下記のような流れになります。

  1. 督促状が届く
  2. 催告書が届く
  3. 滞納処分(財産の差し押さえ)
  4. 銀行預金が自由に引き出せなくなる

各市区町村によって対応は異なりますが、一般的に、納期限から一定期間経っても納税しないと督促状が送られてきます。それでも納税しないと財産が差し押さえされます。差し押さえが実行されるのは、かなり長期間滞納した場合ですが、もちろん実際に実行されたケースもあります。

横浜市では、督促状を送付しても納税しないと催告書が届いて、それでも納税しなと滞納処分という名目で財産が差し押さえられます。ここまでくると、銀行預金が自由に引き出せなくなったりするので、日常生活を送ることも困難になるでしょう。


空き家対策等別措置法

空き家対策等別措置法(正式名称:空家等対策の推進に関する特別措置法)は、空き家を始め、適切に管理されていない建物が地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしている昨今の背景から、2014年に制定された法律です。
この法律により、適切に管理されておらず、倒壊などの危険性がある空き家は「特定空き家」として指定されることになりました。特定空き家に指定されると、建物の所有者は行政から助言や指導、勧告などを受けることになりますが、勧告を受けてしまうと「住宅用地の特例措置」の対象外となるため、固定資産税の減税措置が適用されなくなります。さらに勧告を無視して空き家を放置し続けると、過料、強制撤去などの厳しい措置を受けることになります。

近年、空き家の増加は社会問題になっていて、国や地方自治体もさまざまな対策を取り始めています。直近では、京都市が全国で初めて空き家税の導入を発表し、2026年から施行する見通しです。
実際にどの程度の効果が出るかは分かりませんが、もし効果が現れるようであれば、今後全国普及する可能性もあるでしょう。

【04】お役所もミスします。納税通知書のご確認を!

ここからの内容は「鞭」というわけではありませんが、リスクのひとつとして注意事項を一つご紹介します。
固定資産税の支払金額は、各市区町村からの納税通知書で確認するのが一般的ですが、この通知書の内容に間違いが結構あるようです。実際、2023年には岩手県奥州市で過去複数年にわたり固定資産税の徴収ミスがありました。また、大阪府泉南市でも令和3~4年度の固定資産税・都市計画税の課税ミスがあったと発表されています。役所が計算ミスを起こした事例は決して少なくありません。
そのため、納税通知書の内容をよく確認しないまま納税すると損をすることがあります。納税のときは、納税通知書の内容をよく見て、間違いがないかチェックした方がよろしいです。

とはいえ、固定資産税を評価額から詳細に計算して求めることは困難です。自分でチェックするときは、下記のポイントを抑えて確認するのがよろしいでしょう。

  • 特例や軽減措置が反映されているか確認
  • 私道部分の減額が反映されているか確認
  • 木造なのに、鉄骨造り/鉄筋コンクリート造りの扱いになっていないか確認
  • 公示価格や全国地価マップから大まかな税額を算出。通知書の税額と大きく異なる場合は市区町村に確認(※【01】固定資産税の基礎知識を参照)

まとめ

一戸建ての場合、平均的な固定資産税は10〜15万円程度です。この支払が毎年続きます。
これから不動産の購入を検討している人は、住宅ローンの支払だけでなく、固定資産税も忘れずにランニングコストに含めておきましょう。そして、固定資産税の特例や減税措置を事前にチェックし、最大限に活用することもお忘れなく。

この記事の続きの「知らないと損する固定資産税② ─ 改築・リフォーム予定の人は必見!」もあわせてご覧ください

 

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