不動産関連のコラム

相続不動産を売却するときのリスク④ ─ 土壌汚染

不動産売買において、欠陥や不備などが原因で、契約解除や損害賠償を求められることがあります。その原因の一例として「土壌汚染」があります。工場跡地や農地跡の土壌汚染をはじめ、ゴミを焼却または埋めていた土地でも、土壌汚染が認められたケースがあります。

【01】土壌汚染で損害賠償!?

土壌汚染とは・・・

重金属、有機溶剤、農薬、油などの人体に有害な物質が、健康に影響がある程度、土壌に含まれている状態のことを「土壌汚染」と言います。有害物質の出所の一例として、工場・事業場で使用された原料や廃液の漏洩が挙げられます。また、「重金属を多く含む地層」のように自然由来で汚染されるケースもあります。


【出典:中小事業者のための今すぐ始める土壌汚染対策(経済産業省のガイドブックより)


土壌汚染で損害賠償!?

土地を売却した後で土壌汚染が発覚すると、売主として「契約不適合責任」を問われ、契約解除にいたる可能性があります。「契約不適合責任」とは、売買契約において、目的物が契約の内容に適合しなかった場合に、売主が買主に対して負う責任です。簡単にいうと、商品に欠陥や不備などがあったときに売主はキャンセルに応じたり、損害賠償金を支払う責任が生じるということです。土壌汚染についても、その責任範囲内ということです。
(※以前は「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という名称でしたが、2020年4月1日に施行された改正民法により、売主側の責任範囲がより大きい「契約不適合責任」へと変更されました)

土壌汚染の原因(有害物質等)を除去するためには結構な費用がかかります。汚染除去は長期化することもあり、売却後に買主が除去作業を行った場合、これに要した時間や費用について損害賠償請求されることがリスクとして想定されます。

【02】土壌汚染がありそうな土地の特徴

土壌汚染の調査方法には、主に3種類あります。土地の状態に応じて適切な手法が用いられ、大まかな費用相場は下記のとおりです。

  1. 地歴調査・・・数万円~40万円程度
  2. 状況調査(表層土壌調査)・・・20万円~100万円程度
  3. 詳細調査・・・数十万円~100万円程度

「地歴調査」では、その土地の登記簿謄本や古地図を見て、過去の土地利用履歴を調べます。聴取調査、現地調査等も含まれます。下記は一例ですが、土壌汚染がありそうな土地の特徴(利用履歴)をあげてみました。

  • 工場や事業所が以前あった土地
  • 油や薬品などの有害物質を扱う事業所があった土地
  • 地中埋設物(ゴミなど)があった土地
  • 田んぼや畑などの農地だった土地
  • 焼却炉が設置されていた土地

土壌汚染の可能性が高い土地については「表層土壌調査」「詳細調査」が実施されます。下記3つのケースに至っては、土壌汚染対策法により調査が義務付けられています。

  1. 水質汚濁防止法で定められている施設で、特定有害物質を使用している施設を廃止した場合
  2. 掘削する面積と盛土される面積が3000㎡を超える場合
  3. 稼働中の有害物質使用特定施設で900㎡を超える改変をする場合

【03】ダイオキシンの自主調査(農場・焼却炉の跡地は注意!)

前述の「義務付けられた調査」に対して、土地の所有者が自主的に実施する土壌汚染調査のことを「自主調査」と言います。土地価格の下落や風評被害を避けるために自主調査が行われることが多いです。この自主調査では、主に「ダイオキシン類」の有無を調べることが重要です。特に農家やゴミ処理場があり焼却炉が設置されていた場所は、ダイオキシンによる土壌汚染が発生している可能性が高いです。

ダイオキシン類は土壌汚染対策法で指定された特定有害物質ではありませんが、ダイオキシン類対策特別措置法によって基準や規制を定めています。自治体によってダイオキシン類に関する条例が定められているケースもありますが、全国的に調査が義務付けられているわけではありません。
しかし、土地売却後にダイオキシン類による問題が発生した場合のリスクを考えると、可能性がある土地については自主調査をおすすめします。
なお、ダイオキシン類の調査費用は、対象面積や業者によって異なるため、複数の業者から見積もりを取って確認すると良いでしょう。

【参考:土壌汚染対策法に基づく指定調査機関一覧(環境省のWEBサイトより)

【04】土壌汚染の可能性がある土地を売却する方法

土壌汚染の可能性がある土地は、通常の土地より売却が難しい傾向があります。トラブルを避けるための対策・処置方法としては、以下の3つが考えられます。

①土壌調査を実施してから売却

土壌調査を実施して汚染がないことが判明すれば、売却しやすくなるうえ、売却後に買主とトラブルになることも防げます。ただ、調査費用は必ず掛かりますし、万が一に除去作業が必要になった場合は、さらに高い費用がかかることを覚悟する必要があります。

【土壌調査(現地調査)の様子】


【出典:中小事業者のための今すぐ始める土壌汚染対策(経済産業省のガイドブックより)

②汚染物質の除去にかかる費用を値引き

除去作業を自分で負担しない場合は、除去にかかる費用を値引きして売却する方法を検討しても良いでしょう。

③「訳あり物件専門の買取業者」へ売却

できるだけ手間をかけたくない場合は、訳あり物件専門の買取業者に売却するのもよいでしょう。この買取業者は、通常では売却困難な不動産の買取を専門に行っているため、土壌汚染がある土地でも、速やかに売却できるかもしれません。ただし、こうした買取業者に依頼した場合、通常の売却よりも金額が低くなるというデメリットはあります。

【05】汚染された区域に指定された土地 – 横浜編

横浜市では土壌汚染対策法に加えて、「横浜市生活環境の保全等に関する条例」に基づく調査の結果、指定基準に適合しなかった土地を「汚染された区域に指定された土地」としてホームページ上に掲載します。「要措置区域/条例要措置区域」と「形質変更時要届出区域/条例形質変更時要届出区域」の二種類に分けて掲載されます。


【出典:土壌汚染対策のしくみ(横浜市のWEBサイトより)

①要措置区域/条例要措置区域
この区域は土壌汚染が認められた土地で、汚染の除去等の措置が義務付けられています。この区域の土地を相続した場合は、汚染除去等の措置を施す義務があるため、特に注意しなければなりません。

②形質変更時要届出区域/条例形質変更時要届出区域
こちらの区域は土壌汚染が認められた区域ではありますが、土壌汚染の人への摂取経路がなく、健康被害が生ずるおそれがないため、除去等の措置が求められていません。ただし、土地の形質変更を行うときは、汚染の拡散を防止するため、事前に都道府県知事に届出を提出しなければならず、施工方法の指示も出されます。

【参考:汚染された区域に指定された土地(横浜市のWEBサイトより)

まとめ

よく知らない土地の不動産を相続して、売却するときは売買契約後のトラブルを防ぐためにも、不動産の地歴等をしっかりと把握しておきましょう。土壌汚染は不動産の価値に重要な影響を与えるので、必ず確認するようにしましょう。
もし確認しても分からない場合は、自治体や不動産会社などに相談してみてください。横浜市の場合は、前述のホームページ上で汚染された区域を公開しているので、まずはそちらで確認することをお勧めいたします。

 

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