不動産関連のコラム

どうする? 住宅火災と保険

火災は、不動産の資産価値を急落させることがあります。その被害規模が大きくなると、周辺一帯の土地相場の下落を招き、甚大な損失を被ることもあります。そのため、不動産の所有者は万が一の事態に備え、保険加入など、リスク管理を徹底することが大切です。
今回は、火災保険や火災にあった時にかかる費用などについて解説します。

【01】火災保険の加入ポイントとは?

火災保険は不動産のリスクをカバーするための重要な保険であり、不動産を所有するなら加入は必須といえるでしょう。ただし、火災保険に入っていれば絶対安心とは限りませんので、加入前にポイントを押さえておくことをおすすめします。以下に火災保険の注意点をまとめます。

保険金が支払われないケースがあります

火災保険に加入していても、火事の原因(事由)によっては、保険金が支払われないことがあります。「火災保険の免責(事由)」として保険会社が示しているもので、「このような事柄に対しては保険金を支払いません」というケースがあります。その主なものを3つご紹介させていただきます。

① 地震、噴火、津波による損害

通常の火災保険では地震・噴火・津波などの自然災害はカバーされません。地震については地震保険に加入、または地震保険が含まれている火災保険に加入する必要があります。噴火や津波もこれに同じです。

② 故意の事故、重大な過失、法令違反が原因の損害

「保険金目当ての自宅放火」は、故意の事故であり詐欺にあたります。当然ながら保険金は支払われません。「てんぷら油を火にかけたまま長時間放置」または「寝たばこ」などは重大な過失として取り扱われて、保険金が支払われなかった事例があります。

③ 戦争、核燃料物質が原因の事故

戦争や核燃料物質による事故からの損害も保険対象外となることを覚えておきましょう。


満額支払われないケースがあります

正当に保険金が支払われるケースでも、保険金を満額受け取れない場合があります。保険の支払額によってはこのようなことがあります。
2015年10月から保険の改定が度々実施され、改定の度に保険料が値上げされました。保険料率は「参考純率」をベースにして算出するのですが、この数年間で急上昇していることが下表で見て取れます。

参考純率改定時期火災保険料改定時期参考純率(全国平均)
2014年7月2015年10月以降+3.5%
2018年6月2019年10月以降+5.5%
2019年10月2021年1月以降+4.9%
2021年6月2022年10月以降+10.9%
【出典:出典:火災保険料参考純率(損害保険料率算出機構より)

このような中、保険料を少しでも安く抑える方法として、火災保険の免責金額(自己負担金額)の設定が重要なポイントとなってきました。簡単にいうと、被保険者・契約者が自腹で払う金額を増やせば、保険料が安くなるといった仕組みです。そして、損害が少ないときは自己負担で、損害が大きいときは保険金に頼るといったイメージです。

自己負担の仕方には「エクセス方式(免責方式)」と「フランチャイズ方式」があります。具体的な数字をこの2つの方式に当てはめてみましょう。例えば、エクセス方式の免責金額を3万円。フランチャイズ方式の免責金額を20万円に設定したときに支払われる保険金を下表で比較してみてください。

  • エクセス方式:契約者が一定の金額を自己負担し、それを超えた分から支払われます。
  • フランチャイズ方式:一定の損害額を超えた場合は全額支給されますが、定めた金額未満の場合、保険金は支払われません。

エクセス方式
(免責方式)
フランチャイズ方式
免責3万円の場合免責20万円の場合
保険金1万円の被害保険金:0円保険金:0円
10万円の被害保険金:7万円

(10万円-免責3万円)

保険金:0円
30万円の被害保険金:27万円

(30万円-免責3万円)

保険金:30万円
【出典:火災保険の免責とは(価格.comより)

上記のような事項を知っておかないと、いざ事故が起こったときに「思っていたより保険金の金額が少なかった」という事態になりかねないので、前もって仕組みを把握しておくようにしましょう。ちなみに、火災保険の一般的な免責金額は免責0〜10万円、場合によっては20万円程度まで設定することができます。


2022年10月の改定で何が変わった!?

2022年10月、多くの損害保険会社で火災保険料金が改定となりました。保険料が増額となったほか、破損などで支払われる場合の免責金額を引き上げられるなど、全体的に契約者の負担が大きくなっています。また、火災保険の契約期間が最長10年間から最長5年間へと短縮されることになったのは、改定の大きなポイントといえるでしょう。

  • 保険料の増額
  • 免責金額の引き上げ(破損支払など)
  • 火災保険の契約期間が最長10年間から最長5年間へ短縮

火災保険料金が改定となった背景には、近年の地球温暖化や気候変動の変化に伴い、予測困難な自然災害が増加したことが、大きな要因となっています。

【02】地震保険に火災保険が組み込まれている商品もある

地震保険は単独では契約できず、火災保険とセットで加入する必要があります。これは地震保険の保険料が高額になりやすいことや、地震の予測が困難であることなどを踏まえて、国土交通省が定めたルールです。

あと、前章でも説明しましたが、地震保険に加入していなかった場合、地震によって火災被害が発生したとしても、補償を受けることはできません。でも、地震保険に加入していれば、地震による火災はもちろん、損壊、津波など幅広い補償を受けられるほか、噴火による被害も補償が受けられますので、覚えておいてください。

【03】延焼(もらい火)でも損害賠償はできない?

隣家から出火して自分の家が延焼した場合、相手方に対し損害賠償請求はできるのでしょうか?
火事を起こした建物の所有者が明確なのであれば、責任を問えるように思えますが、「失火責任法」(失火法)」という法律により、故意や重過失でない限り、火元は損害賠償責任を負う必要がないと定められています。つまり、延焼被害の修復費などは被害者自身が負担することになります。被害者側としては堪ったものではありませんが、これが現実です。「火元は七代祟る」ということわざがありますが、被害者の心情をよく表していると思います。

被害者にとっての救いは、火災保険を活用すれば修復費用は補償されます。ただし、全額補償されるとは限らないので、損害の規模によっては自費負担が多くなる可能性もあります。

【04】火災ごみの処理方法や費用の注意点

火災の場合、火災ごみの処理方法にも注意を払わなければなりません。処理方法や処理費用は一般廃棄物、産業廃棄物によって異なるので、まずはどちらに該当するかを調べる必要があります。なお、一般廃棄物と産業廃棄物の定義は以下の通りです。

  • 一般廃棄物:産業廃棄物に該当しない廃棄物
  • 産業廃棄物:事業活動から発生した特定の20種類の廃棄物のこと

住宅が火災による被害を受け、それに伴って発生した火災ごみは、基本的に一般廃棄物に該当します。一般廃棄物であれば通常のごみと同じように、自治体に回収してもらうことが可能なので、費用がかかることもないでしょう。

しかし、大規模な火災などにより大量の燃えかすが発生した場合、通常の方法では回収してもらえないため、廃棄物処理業者に依頼して回収してもらう必要があり、別途費用がかかります。また、火災で損壊した建物を解体する場合は、解体工事が事業活動と見なされるため、その際に発生した廃棄物は産業廃棄物に該当します。

火災ごみの産業廃棄物処理費用は、火災の程度や住宅の構造などによって異なりますが、一般的に合計解体費用の10~20%が相場とされています。通常の解体工事の場合、合計解体費用の3~5%が相場なので、火災の場合はかなり割高になります。

【05】横浜市の地震火災対策について

横浜市では、地震火災の被害が特定の地域に集中すると想定して、その地域に対して重点的な対策を実施しています。例えば、木造建築物など耐火性能が低い建築物が密集していて、広い道路や公園が少ない地域を、火災危険度が高い地域として、「防災力・消防力の向上」「道路の整備」「建築物の不燃化」など、さまざまな対策を実施しています。
【参考:横浜市の地震火災対策(横浜市のPDF資料)


【出典:地震火災対策のエリアについて(横浜市のWEBサイトより)


保険を検討するときの判断基準

上図は「横浜市が対策を実施している地域」という名目の地図ですが、これはもう火災の危険度を示すハザードマップといってよいでしょう。地図上の色のついた地域に住居を構えている人にとって、「保険」を検討するときの判断基準になると思います。

まとめ

不動産を所有する人にとって火災保険は必要不可欠な保険です。ただ、火災保険にもさまざまな種類や規定があるので、附属保険の有無、免責や免責金額の確認は必ず理解するようにしてください。

近年は地球温暖化や気候変動によって、台風や大雨などの被害が増加傾向にあります。元々、日本は地震大国といわれていますが、自然災害への備えは今後さらに重要なポイントになるでしょう。自分の住む地域のハザードマップを確認して、どのような災害が起こりそうか把握することも、火災保険を検討する際の判断基準になります。

横浜市では、上記の「地震火災対策エリア」の指標以外にも、下の参考リンクから各区のハザードマップを閲覧できるので、横浜周辺で不動産の購入を検討している方は、ぜひ一度確認するようにしてください。(下図は横浜市の「地震マップ」より)
【参考:防災の地図(横浜市のWEBサイトより)

 

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