不動産関連のコラム

中古住宅市場が活発。今こそインスペクション

近年、中古住宅の需要は大きく高まっています。まさに売り時といえる状況でしょう。このタイミングで、買主にアピールできる要素をさらに加えることが出来れば、より早く高値で売却できる可能性が高まります。例えば、「インスペクション」や「既存住宅売買瑕疵保険」などです。
本記事では最新の中古住宅市場の動向をはじめ、インスペクションや既存住宅売買瑕疵保険の重要性について解説します。

【01】中古住宅市場およびリフォーム市場の動向

初めに最新の中古住宅市場の動向を解説します。不動産の売買だけでなく、リフォーム市場も活発化している点も、併せて理解しておきましょう。

中古住宅市場は活発化

中古住宅というと、不人気なイメージを持っている人もいるかもしれませんが、現在は決してそうではありません。確かに日本人は新築志向が強く、たとえ安価であっても中古住宅は避けられがちで、かつては好条件で売却することが困難でした。ところが、近年では建築資材や人件費の高騰により、新築住宅の価格が非常に高額になって、購入のハードルが上がっているのが実態です。

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こうした事情から、高額な新築住宅を諦め、中古住宅へ目を向ける人が増加傾向にあります。すでに人気エリアでは中古住宅が品薄傾向にあり、特に首都圏では住宅の在庫が減少して需要が追いつかない状況が続いています。一般的に市場価格は需要量と供給量のバランスによって決定されますが、不動産も例外ではありません。需要量が上昇し供給量が減少している現在において、中古住宅は高く売りやすい時期といえるでしょう。

首都圏中古戸建住宅の成約件数

首都圏中古戸建住宅の成約物件の平均価格

【出典:首都圏不動産流通市場の動向(公益財団法人東日本不動産流通機構)


リフォーム市場も活発化

中古住宅購入において、自分好みにリフォームをする人が多い傾向にあります。築古物件や空き家でも、最新のリフォーム技術を用いれば新築のような真新しい状態にすることが可能です。また、売主側が買い手の注目を引くために、自ら住宅をリフォームして売却するケースも少なくありません。
さらに省エネ、バリアフリー、耐震リフォームは国や地方自治体も推奨しており、補助金や助成金制度、税制優遇の対象となる場合もあります。

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このような影響に加え、コロナ禍によって巣ごもり需要が拡大したことで、リフォーム市場も近年、活発化しています。

【02】インスペクションは実施すべき?

2018年から中古住宅の売買において、インスペクションに関する説明が義務化されました。具体的に義務化されたのは、以下の3点です。

  • インスペクションについての説明
  • インスペクションが実施済なら、その結果
  • 売主や買主が建物の状況を書面で説明を受ける

実施そのものが義務化されたわけではないため、実施するかどうかは売主の判断に委ねられます。では、インスペクションは実施すべきかどうか考えていきましょう。


インスペクションとは

インスペクションは建物診断状況調査とも呼ばれ、主に中古不動産を売買する際に行われます。専門資格(ホームインスペクター、建築士など)を所持した調査員が、目視や計測などによって建物の安全性や劣化状況などを調査します。インスペクションは建物診断シートを元に行われ、主な調査項目として、外壁のひび割れ、雨漏りなど「構造上の安全性」のほか、「日常生活への支障があると考えられる劣化や性能低下があるか」などがあります。インスペクションを行う場合、原則として売主が費用負担する必要がありますが、物件の状況を把握するために重要です。

インスペクションの対象部位の例

 

インスペクションの活用例

【出典:インスペクションの概要と活用(国土交通省)


インスペクションを行うメリット・デメリット

インスペクションを実施して、住宅の安全性や劣化状況に問題ないことを証明できれば、売却価格にもある程度反映させられます。また、インスペクションを実施していない物件より、高い価格で売り出せるため、成約率も高くなるでしょう。実際にインスペクションを実施して、もし建物に隠れた瑕疵が見つかれば、事前に修繕して改善できるので、購入後のトラブル防止にも繋がります。

一方、インスペクションを実施するには費用と時間がかかるうえ、欠陥箇所が見つかり修繕をする場合は、さらに手間を要します。ホームインスペクションの費用相場は一般的な戸建て住宅で5~7万円程度なので、大きなコストではありませんが、必ずしも高い費用対効果が得られるとは限りません。基本的に築年数が古い物件や劣化が散見される物件では実施が望ましいですが、立地や売却したいタイミングなど、さまざまな観点から検討することが大切です。

 

【03】既存住宅売買瑕疵保険

既存住宅売買瑕疵保険とは

中古住宅の売主が加入できる「既存住宅売買瑕疵保険(きぞんじゅうたくばいばいかしほけん)」というものがあります。売却物件に不具合があって買主から補修費用を求められた場合に対応できる保険です。売却後に隠れた瑕疵が発見された場合、多額の修補費用がかかるケースもあるため、保険に加入しておくことは、リスク回避の手段として有効です。

そして、この保険へ加入している物件を購入した買主は、さまざまな「税制優遇」を受けることが出来ます。税制優遇を受けるために既存住宅売買瑕疵保険に加入している物件を探す買主もいるほどです。加入しておけば、売り出し時のアピールポイントにもなり、買い手が見つかりやすくなるでしょう。


保険加入のためには検査

既存住宅売買瑕疵保険に加入するためには、第三者による物件検査を実施する必要があり、検査に合格しなければ、保険には加入できません。すなわち、既存住宅売買瑕疵保険に加入することは、検査に通った安全性の高い物件の証明にもなります。

ただし、ここで行う検査とは前述したインスペクションとはまた違った内容のものです。混同されがちですが、インスペクションを実施すれば必ず既存住宅売買瑕疵保険に加入できるわけでないことを覚えておきましょう。

既存住宅売買瑕疵保険(宅建業者販売タイプ)

【出典:既存住宅売買瑕疵保険 ─ 宅建業者販売タイプ(国土交通省)


保険の注意点

既存住宅売買瑕疵保険の保証対象になるのは建物の主要部分のみです。主要部分として該当するのは、以下の箇所です。

  • 柱や梁、基礎など建物の基本構造部分
  • 給排水管など生活するのに不可欠な部分
  • 屋根など雨水の侵入を防ぐ部分

また、保証期間が定められており、金額も全額保証されるわけではなく、保険商品によって個別に決められています。一般的には、期間は1~5年程度、保険金額は200万~1000万円程度となっています。期間や金額が大きければ、それだけ加入金額も高額になるため、どの程度が望ましいかは加入者側がよく考える必要があります。

まとめ

中古住宅やリフォーム市場は今後も活発化することが予想されます。現在は特に需要が高まっているため、売り時といえる状況です。一方、インスペクションの義務化を始め、不動産売買に関する法規制は年々厳しくなっているので、売却する場合は取引後のトラブルを防ぐためにも、基礎知識をつけておくことが大切です。

また、インスペクションや既存住宅売買瑕疵保険は売主だけでなく、買主も実施・加入が可能なので、必ずしも売主が実施・加入する必要はありませんが、売却を有利に進められるメリットがあります。実際に不動産ポータルサイトで物件を紹介するときは、「ホームインスペクションの実施済み」や「既存住宅売買瑕疵保険加入物件」として掲載するため、買い手の目に止まりやすくなるでしょう。
ただし、時間や費用はかかってしまうため、信頼できる不動産会社の意見も聞いたうえで実施すべきかどうか検討することが重要です。もちろん、五條建設でもご相談いただけますので、お気軽にお声がけください。

 

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